溺れる

2013.10.03 02:52|散文
 溺れる、と思った。苦しいのにどこか心地よく安らいでいた。ぬくいお湯の中に閉じ込められているような感覚。お腹の胃の辺り、たっぷりと冷めないスープが入っているかのように内側が熱い。それが時々胸の方まで押し上げてくるようで、苦しくなるのだ。口からあぶくが、濁った茶色の液体の中で白く煌めく泡の塊が、目の前を擦り抜けて消えていく。もうそろそろ肺まで熱いスープで満たされるのではないか。そう思って少し怖くなって身体を丸めたが、そんな寒気も溶かされるようにやがては失せた。また徐々に身体は開く。
 もう上下もわからず、茶色かった液体も次第に黒ずんできている。沈んでいるのか、と呆然と悟るように思う。もう浮かびたいとも思っていなかった。
 溺れることを恐れなくなったのはいつからだろう。溺れてしまったら自分がなくなってしまうという気がして、ずっと無意識に自分を抑えて縮こまっていた。しかし、一度溺れることに気を許してしまった途端、どうだろう。あまりの心地よさに、もうどうにも身体中の力が弛緩してしまっていうことを聞かないのだ。否、いうことなど何一つない。こうなってみてはじめて、本当は溺れてしまいたかったのだと知った。
 身体の内と外との温度差が段々と大きくなっていることを感じながら、わたしは尚も深く沈む。
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