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夜の訪問者

2011.07.12 15:05|散文
 ある日、わたしのもとに悪魔が訪ねてきました。
 彼はわたしを一目見るなり言いました。
「おまえの人生の中で消し去りたい者の名を一人だけ挙げよ。望みを叶えてやろう」
 わたしは迷わず答えました。
「では、わたしを」
 すると悪魔は眉をひそめて言いました。
「俺に綺麗事など言う必要はない。誰でもおまえが一番憎いと思う者を、この世に初めから存在しなかったことにしてやると言っているのだ」
 わたしは困って、首をかしげて彼を見ました。
「ええ、わかっていますとも。あなたは誰でもいいとおっしゃいました。ですから、一番憎いこのわたしを消して下さいと、お願いしたのです」
 彼は苛立たしげに鎌を持ち替えました。
「例えば、おまえを苛めた連中の一人はどうだ? おまえを毛嫌いしていつも不当に評価を下げていた教師は? はたまた、おまえを避ける一方で弟には愛情をかける姉は?」
 わたしは軽い失望感を覚えました。
「そんな些細なことでいちいち消して頂いていては、きりがないではありませんか。そんなことはどうでもよろしゅうございます。一番やっかいで憎らしいのは、常にわたしに付きまとうこのわたしです」
 彼は落胆したようでした。それでもわたしは続けました。
「他人に不快感を与えるのも、不快感を感じるのも、憎まれるのも憎むのも、すべてこのわたしです。この知覚が、感情が、なくなってくれたならばどんなにか楽でしょう。わたしが初めからいなくなることで、少なくとも一人分、彼らは不快感も憎しみも感じずに済むことになります。そしてわたしも、救われるでしょう」
 悪魔はわたしに背を向けた。
「おまえの魂を奪えないのなら、俺には望みを叶えるメリットがない。これ以上は徒労だ」
 わたしは彼を引きとめました。半ば本能的な行動でした。
「それならば、魂を採ってから消せばよろしいでしょう? どうかどうか」
 彼は顔だけで振り向いた。なぜかわたしには、その姿がとても悲しげに映った。
「この世界はおかしい。おまえのような人間が、いったい何人いたことか。どうにも割に合わないね」
 それだけ言うと、悪魔は夜へと帰って行きました。
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